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岡山地方裁判所倉敷支部 昭和55年(ワ)188号 判決 1981年3月27日

原告

山形康夫

ほか一名

被告

山形菅一

主文

一  被告は原告山形康夫に対し、金八〇〇万円と、これに対する昭和五五年一〇月二九日から支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告山形一樹に対し金五六一万二、七四六円と、これに対する昭和五五年一〇月二九日から支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

三  原告山形一樹のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、原告康夫と被告との間に生じた部分は、被告の負担とし、原告一樹と被告との間に生じた部分はこれを八分し、その一を原告一樹の負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、仮に執行できる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一項と同旨

2  被告は原告山形一樹に対し、金六〇〇万円とこれに対する昭和五五年一〇月二九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  事故の発生

(1) 日時 昭和五一年八月二九日午後五時四〇分頃

(2) 場所 倉敷市広江七丁目二番一号先路上

(3) 加害車両 普通貨物自動車(岡四四ね一四八三)

(4) 右運転者兼所有者 被告

(5) 被害者 原告山形康夫(以下原告康夫という)

訴外亡山形寿子(以下寿子という)

(6) 事故の態様 前記場所の交通整理の行われていない交差点において北から南に向けて進行してきた訴外三宅運転の普通乗用自動車(岡五の八六六〇)と、西から東へ向けて進振してきた被告運転の加害車両とが出会頭に衝突し被告運転の車両に同乗していた原告康夫に傷害を負わせ、同じく寿子を死亡させたもの。

(二)  傷害の部位、程度

1 傷害の程度

(一) 寿子について

脳挫傷・頭蓋骨々折により死亡

(二) 原告康夫について

左腓骨々折、左足内踝骨折、左肩鎖関節亜脱臼、全身打撲等

2 入・通院期間

(一) 寿子について

昭和五一年八月二九日より死亡した同月三一日まで(三日間)倉敷市水島の水島中央病院に入院。

(二) 原告康夫について

(1) 入院 昭和五一年八月二九日より同年一二月二七日まで(一二一日間)、倉敷市水島の協同病院にて入院治療

(2) 通院 昭和五一年一二月二八日より同五二年五月二日まで(一二六日間)同病院にて通院治療(内治療実数六四日)

3 原告康夫の後遺障害

左足関節の機能に著しい障害を残す。(自賠法施行令第二条後遺障害別等級表第一〇級に相当)

(三) 責任

被告山形菅一は加害車両の所有者であり、同車両を自己のために運行の用に供しており、自賠法第三条による運行供用者責任を負うものである。

(四) 損害

寿子及び原告康夫は、本件事故により少なくともそれぞれ以下の如き損害を蒙つた。

1 寿子について生じた損害 (合計金五八二七万〇、三六二円)

(一) 治療費 金一二万一、九六〇円

(二) 付添費 金七、五〇〇円

医師が付添看護を要するとした三日間、寿子の母である山形トミが付添をしたのでその間の付添費として一日当り金二、五〇〇円で計算。

(三) 入院諸雑費 金一、八〇〇円

入院諸雑費として一日当り金六〇〇円で三日分

(四) 逸失利益

(1) 休業損害 金二万九、七〇六円

(イ) 休業期間 三日間

(ロ) 事故前の寿子の収入

寿子は、原告康夫及びその両親とともに原告康夫の住所地において収容人員四〇名の民宿「山形荘」を営んでおり、昭和五一年六月一日より同年八月二八日までの事故前八九日間の民宿経営による収入総額金三六八万四、五〇〇円でその間の必要経費は金一四八万一、二五〇円であるから、民宿経営による一日の収益は金二万四、七五五円となる。

<省略>

そして、寿子の右民宿経営による寄与率は四〇%とみるのを相当とするから寿子自身の一日の収入としては金九、九〇二円となる。

24755×40/100=9902円

(ハ) 従つて、休業損害は金二万九、七〇六円となる。

9902×3=29706円

(2) 死亡による逸失利益 金四九七〇万九、三九六円

(イ) 寿子は本件事故当時二三歳であり、六七歳に達するまでの四四年間就労が可能であつた。

(ロ) 生活費控除 四〇%

(ハ) 寿子の死亡による逸失利益は金四九七〇万九、三九六円となる。

9902(寿子の1日当りの収入)×365×(1-0.4)×22923(44年の新ホフマン係数)=49709396円

(五) 葬儀費 金四〇万円

(六) 慰藉料 金八〇〇万円

生後三ケ月の長男を残し、二三歳の若さで死亡した寿子の精神的損害は金八〇〇万円をもつて相当とする。

2 原告康夫に生じた損害(合計金二八五二万一、二八二円)

(一) 治療費 金七七万九、九七〇円

(二) 付添費 金二万五、〇〇〇円

医師が付添看護を要するとした一〇日間、父の兄弟の妻である訴外森初江が付添をしたので、その間の付添費を一日当り金二五〇〇円で計算。

(三) 入院諸雑費 金七万二六〇〇円

入院諸雑費として一日当り金六〇〇円の一二一日分。

(四) 通院費 金三万五八四〇円

実治療日数六四日間の通院費としてバス運賃五六〇円(往復)で計算した額。

(五) 逸失利益

(1) 休業損害 金二七三万二、九五二円

(イ) 休業期間 昭和五一年八月二九日から同五二年五月三一日までの二七六日間

(ロ) 事故前の原告康夫の収入

前述の如く原告康夫は寿子及び自己の両親とともに民宿経営をなし、事故前この民宿経営により一日当り金二万四七五五円の収益をあげていた。

(前記(四)/(四)(1)(ロ))

原告康夫の民宿経営に対する寄与率は四〇%とみるのを相当とするから原告康夫の事故前の一日当りの収益は金九九〇二円となる。

24755×40/100=9902円

(ハ) 従つて、原告康夫の休業損害は金二七三万二九五二円となる。

9902×276=2732952円

(2) 後遺障害による労働能力喪失損 金二一四三万四九二〇円

原告康夫には本件事故により前記後遺障害が生じており、これにより喪失した労働能力を金銭に評価すれば一日当り金二六七三円となる。

9902(原告康夫の1日当りの収入)×27/100(後遺障害等級第10級の労働能力喪失率)=2673円

原告康夫は、本件事故当時は二六歳で六七歳に達するまでの四一年間就労可能であるから、労働能力喪失による逸失利益は金二一四三万四九二〇円である。

2763×365×21.973(新ホフマン係数41年)=21434920円

(六) 慰藉料

(1) 入・通院の慰藉料

原告康夫は前記入・通院治療を受けこれに対する精神上の苦痛を慰藉するには金一四三万円をもつて相当とする。

(2) 後遺障害による慰藉料

原告康夫には、前記後遺障害が残りこれに対する精神上の苦痛を慰藉するには金二〇一万円をもつて相当とする。

(五) 損害の填補

1 寿子について生じた損害の填補

寿子について生じた損害のうち、自賠責保険より金一八一〇万八八八〇円が支払われている。

2 原告康夫について生じた損害の填補

原告康夫について生じた損害のうち、自賠責保険より金七八八万八〇七五円が支払われている。

(六) 寿子の夫である原告康夫と寿子の子である原告山形一樹(以下原告一樹という)は、寿子の被告に対する損害賠償請求権をそれぞれの相続分に応じて相続したもので、原告康夫及び原告一樹の被告に対する損害賠償請求金は左記のとおりとなる。

1 原告康夫の損害賠償請求金 金三四〇二万〇三六八円

(28521282(原告康夫自身の損害)+58270362(寿子の損害)×1/3)-(7888075+18108880×1/3)=34020368

2 原告一樹の損害賠償請求金 金二六七七万四三二二円

5827036(寿子の損害)×2/3-1810880×2/3=26774322

(七) よつて、原告康夫は被告に対し、右損害賠償請求金のうち金八〇〇万円とこれに対する本訴状送達の翌日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を、原告一樹は右損害賠償請求金のうち金六〇〇万円とこれに対する不法行為後の昭和五五年一〇月二九日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因(一)ないし(三)および(五)の事実を認め、その余の事実は不知。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因(一)交通事故の発生(二)傷害等の内容(三)被告の責任(五)損害の填補については、いずれも当事者間に争いがない。

二  損害額について

(一)  寿子について

1  治療費 成立に争いのない甲第三号証によると、五九、一八八円の治療費を必要としたものと認められる。

2  付添費 成立に争いのない甲第二号証に、原告山形康夫本人尋問の結果によると、付添費用として七、五〇〇円の損害を受けたものと認められる。

3  入院雑費

一、八〇〇円と認めるのを相当とする。

4  逸失利益等

原告は、寿子がその夫らと共に民宿を経営し、寿子は、一日当り九、九〇二円の収入があつたとするが、計算の基礎(期間、必要経費、寄与率等)についての立証が本件では不充分であり、むしろ平均賃金を基礎として算定するのが妥当と考えられる。

しかして、昭和五一年賃金センサスによると女子二三歳の年間平均給与額は、一三九万〇、八〇〇円であるから、これを基礎にして算定することとする。

(1) 休業損 一万一、四三一円と認める。

(2) 逸失利益

寿子は、死亡時二三歳で六七歳まで就労可能であつたと認められるので、その間生活費控除を四割として逸失利益を算定すると一九一二万八、〇〇〇円となる(一、〇〇〇円以下切捨)。

1,390,800×(1-0.4)×22,923=19,128,785

5  葬儀費 四〇万円と認めるを相当とする。

6  慰藉料 七〇〇万円と認めるを相当とする。

以上合計金二六五二万八、〇〇〇円

(二)  原告康夫について

1  治療費 成立に争いのない甲第七ないし第九号証によると治療費として四八万七、五〇二円を必要としたものと認める。

2  付添費 成立に争いのない甲第四号証によると、二万五、〇〇〇円を要したものと認められる。

3  入院雑費 七万二、六〇〇円と認めるを相当とする。

4  通院費 弁論の全趣旨によると、三五、八四〇円を要したものと認められる。

5  逸失利益等

原告康夫は民宿経営による一日当りの収入を基礎として算出するが前記寿子の収入で説明したと同様の理由により平均賃金により算出する。

しかるときは、昭和五一年賃金センサスによると男子二六歳の年間平均給与額は、二〇一万九、八〇〇円でありこれを基礎として算出する。

(1) 休業損

弁論の全趣旨によると、二七六日傷害のため休業したものと認められ、休業損害は一五二万七、三〇〇円となる。

2,019,800×1/365×276=1,527,300

(2) 後遺障害による逸失利益

原告康夫が第一〇級相当の後遺障害を生じたことは、当事者間に争いがないので、労働能力喪失率は二七パーセントと認めるを相当とし、又康夫は二六歳から六七歳までの四一年間就労可能と認められるので、労働能力喪失による逸失利益額は一一九八万二、八八七円と認められる。

201万9,800×27/100×21,973=1198万2,887

6  慰藉料

傷害による慰藉料として三〇〇万円を認めるを相当とする。

以上合計金一七一三万一、一二九円となる。

三  原告らの損害額

成立に争いのない甲第一二号証によると、寿子の相続人として夫康夫が三分の一、子一樹が三分の二相続したものと認められるので、原告らの請求金額は次のとおりとなる。

1  原告康夫は七八八万八、〇七五円を保険金として受領したことを自認するので、右金額を控除すると、九二四万三、〇五四円となるところ、寿子の相続分(二六五二万八、〇〇〇円より原告らの自認する一八一〇万八、八八〇円を控除し、更にその額の三分の一)二八〇万六、三七三円を加算すると、一二〇四万九、四二七円となる。

2  原告一樹は、母寿子の相続人として保険金を控除後の八四一万九、一二〇円の三分の二の五六一万二、七四六円の損害を受けたものと認められる。

四  さすれば、原告康夫の被告に対する内金八〇〇万円およびこれに対する不法行為後の昭和五五年一〇月二九日から右金完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は正当であるからこれを認容すべく、原告一樹の被告に対する請求は、五六一万二、七四六円およびこれに対する右同日から完済まで右同様年五分の支払を求める請求は正当であるが、その余の請求は失当としてこれを棄却することとし、民訴法八九条、九二条、九三条、一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 平田勝美)

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